ひとりごと ~Mくんのこと~

Mくんのこと

 

赴任してきたばかりの私に

「おれが教えてやっけん♪」

とひとこと。

学校や

遊び場所や

校庭の隅っこの小さな湧水

いろいろ案内してくれたこと

今でもよく覚えています

 

もうあれから20年になります

Mくんは2年生でした

 

クラス1の働き者で

友達やクラスや私のために

よく体を動かしてくれました

 

褒められると細い目をさらに細くして・・・

口もきゅっと結んで・・・

わざとこちらを見ないで でも口元はちょっとにやり・・・

得意な時にはいつもこの顔でした

 

猛烈アピールも得意でしたが

実はとってもテレ屋だったんでしょうね~

 

学校の畑の世話も誰よりも熱心で・・・

朝は畑に寄ってから教室へ・・・

帰りも畑で自分の野菜にさよならしてから・・・

 

だから・・・

 

学校で飼っていたやぎが逃げ出して

よりによってMくんのトウモロコシを食べてしまったのは衝撃でした

よりによって・・・

 

毎朝毎夕畑に寄って世話してるMくん・・・

これを知ったら哀しむだろうと

やせっぽちの余りの苗を代わりに植えておきました

こっそりと・・・

 

 

次の日の朝

Mくんは案の定ランドセルを背負ったまま畑に直行していきました

しゃがんで苗をじっと見つめているMくんと

その姿を見ながらドキドキの私・・・

 

気がつくかな~・・・

気がつくよね~・・・

どうしようかな~・・・

 

 

私に気付いたMくん、大きな声で言いましたね

「おれのトウモロコシがやせてしまったわ!!!」

 

「トウモロコシがヤセテシマッタ」がなんとかわいかったことか

ついつい吹きだしてしまいました

 

種明かしをして謝りましたが

もちろんMくんは怒りませんでしたよ

ヤギのメリーちゃんのことも 私のことも

 

人一倍おひとよしでまじめなひとで

でもとってもひょうきんで

ほんとに優しい少年でした

 

 

 

中学になり高校になり大人になっても

Mくんにはよく出会いました

ご縁があったんでしょうね

彼のおうちのすぐ近くに家を借りたので「ご近所」さんになったから

 

 

ちょっとアブナゲな車に乗るようになっても

髪は金色になっても

中身はそのまんま
Mくんのまんまでした

 

小さい頃からそうだったように

春になれば苗植えを

秋になれば稲刈りを

おうちの人といっしょにがんばっていたものです

 

 

出会えば「Mくん節」炸裂で・・・

いろんな話を聞かせてくれたものです

 

 

私がお仕事を変わってから

お店に初めて遊びにきてくれたのはいつだったでしょうか

可愛い彼女をつれて

 

細い目をさらに細くして 口元だけはにやり

昔と全くかわらない「得意な時の顔」をして

 

時々彼女とふらっとやってきては

いろんな話をしてくれました

 

漁師になった、と、教えてくれました

彼女は魚がさばけないから

魚の時はおれがやってやるんだって言ってましたっけ

 

じゃ、私にもいつか捌き方を教えてよ、と、お願いしてたのに

 

 

私はついにさばいてもらうことはありませんでしたね

さばき方も教えてもらうことはできませんでした

 

 

 

 

 

 

こんなお別れになるとは思いもしませんでした

どんなお別れも辛いですが

突然だとなおのこと・・・

ご家族や彼女さんの気持ちを思うと言葉がありません

 

でも・・・

一番悔しかったり悲しかったりするのは

家族思いで彼女思いだったMくんなんでしょう

 

 

もっともっといろんなMくんを見てみたかったのに

これから楽しいこともいっぱいだっただろうに

残念で残念でなりません

 

 

 

 

 

いつかまたちょっと元気が出てきたら

Mくんの話をしたいなと思います